RMリソース
リスクマネジメント Lesson
 3.リスクの認識
 
 
◆排除すべき4つの「あ」  ◆リスクの分類  ◆手法  ◆現場のリスク
◆戦略リスク  ◆コンプライアンス  ◆財務リスク
 
 
コンプライアンス
 コンプライアンスという言葉は、既に日本社会に定着しました。コンプライアンスとは法令遵守であり、そのリスクとは組織内部で法規制違反を犯すことです。「法規制を守ることはあたりまえだ」という言葉で、コンプライアンスへの対応に着手しない経営者をよく見かけます。しかし、全ての法規制を遵守しながら企業運営を行うことは意外と難しいのです。
 
 赤信号の横断歩道を一度も渡ったことのない人がどれだけいるでしょうか?通常1万円で宿泊しているホテルに、キャンペーン中につき9千円で泊まれた時、素直に今回は9千円でした、と申告できるでしょうか?人は残念ながらそれほど完璧ではありません。心理学や社会学で使われる「バイアス」という言葉があります。これは、冷静に考えた時の結論とは別の行動をしてしまう、または過ちに気付かない心理状態を意味し、人間であれば誰もが陥ります。

「みんながやっているから問題ない」
「誰も見ていないからわからないだろう」
「これまで大丈夫だったから大丈夫であろう」
「会社のためだ」

 これらは自分が法規制に違反している事を理解しながら、行動してしまう時の自分に対する言い訳です。特に企業の場合、会社のためだという正義感バイアスから重大な法令違反に発展するケースが多々見られます。大手食品製造メーカーの賞味期限や産地の偽造や商品の巻き直しなど、現場担当者が管理者の指示無しに行っていたとは考え難いものがあります。しかし、その行為が法規制違反であることは理解していたでしょう。
 
 以前の日本社会では、組織に利益をもたらす法規制違反行為が発覚した場合、あくまでも一社員の個人判断による違反行為とし、責任を個人に擦り付けることにより組織の信頼をつないできました。そこには透明性が無いばかりか説明責任が果たされておらず、日本社会特有の「本音と建前」が垣間見えました。
 そこでコンプライアンスが重要となります。たとえ法令違反が一社員の判断であっても、その違反行為を見過ごしてしまう管理体制の不備は組織の責任であり、経営者には社内において法令違反ができない体制を構築する責任があります。つまり、組織内に違反者が出た場合、組織関与の有無に関わらず経営者の責任であることを明確にしたのです。
 
 
 法令遵守のためのコンプライアンス体制とは、悪い社員を発見するシステムではなく、人間は過ちを犯す可能性を持っている事を前提に、組織が良いこと悪いことを明確にし、法令違反を許さない社内環境を構築することです。また、業務において知らぬ間に違反を犯すことが無いよう、人ではなく業務の流れを監視する体制をシステムとして確立することが重要となっています。
 
 
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