RMリソース
リスクマネジメント Lesson
 3.リスクの認識
 
 
◆排除すべき4つの「あ」  ◆リスクの分類  ◆手法  ◆現場のリスク
◆戦略リスク  ◆コンプライアンス  ◆財務リスク
 
 
戦略リスク
 戦略リスクは主として、経営者や経営戦略室がリスクオーナーとなるリスクです。米国のリスクマネジメント先進企業では、あらゆる新規事業の会議や経営者会議にはリスクマネジャーが参加し、検討内容に対しリスクの視点で意見を述べます。
 
 
利益の裏のリスク
 日本企業に限らず多くの製造業者が、人件費の安さから一時中国や東南アジアへ次々と工場を移設、製造コストを圧縮することにより利益の拡大に成功しました。しかし、それにより目に見えない財産の喪失や期待売上の減少という損失を被っています。コピー商品の流通による市場の喪失や巨額な開発費を費やした技術の流出がそれにあたります。また、米国の大手スポーツ用品メーカーでは、工場で児童労働を黙認していたとしてNPO等の団体が中心となり不買運動が発生、売上とともに信用やブランド価値が大幅に下落しました。
どちらも利益追求のみに着目し、利益の裏にあるリスクの管理に失敗した例といえるでしょう。
 
 
情報収集の重要性
 戦略リスクの認識で難しいのは、前例がないということです。新規市場の開拓、IT等技術の革新による新しい時代での経営など、前例がない環境下での企業運営はさまざまなシナリオを想定する必要があります。しかし、リスクは往々にして想定外の範囲で顕在化します。全てのリスクを認識するのは予言者でない限り不可能でしょう。

そこで重要となるのが情報収集です。

海外での販売や生産拠点の拡大を行う場合、その国の法律、文化、習慣、国民の考え方に関する情報を収集、学習し、日本との違いを明確にすることから始める必要があります。日本との違いがまさにリスクなのです。
多くの企業、特に中小企業などは第3者へ中間手続きを委託し、その土地の文化も知らずに工場を建設しているケースを良く耳にします。しかし、この第3者が提供できる内容と企業が期待する内容には格差があります。業務委託者はリスク管理までを期待しますが、請負側はリスクの開示まですることはあっても、その対策や管理方法まで業務の一環として行うことは少ないのです。

  グローバル企業である米国のIT関連企業では、8名いるリスクマネジメント室のスタッフのうち、2名は常に世界で発生した事件や事故の情報を収集し、それが自社に発生した場合の影響を検討しているといいます。国を問わず企業で発生した事象は、自社にも発生する可能性がある、という考えが土台となっています。
 
 
 
 リスク社会といわれる現代社会で生き残るためにはどうすれば良いのでしょうか?それは、全てにおいて自己責任であることを認識し、リスク管理を他人任せにせず、リスクの管理、対応は組織内で戦略的に行う企業文化と体制を構築するしかありません。
 
 
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