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リスクマネジメント Lesson
2.リスクマネジメントの必要性
 
 
◆規制緩和  ◆グローバル化  ◆社会的責任の要請  ◆情報技術の革新
メインバンク制度崩壊  ◆雇用形態の変化  ◆気象の変化   ◆法的要請
 
規制緩和
 1980年代から世界的に規制緩和政策が進められました。規制緩和は、市場の拡大、自由競争、そして管理行政の縮小を目的とし、多くの業界において参入規制や販売・管理規制などが緩和されました。「緩和」「自由」といった言葉から、人々はポジティブなイメージを抱き、経済の大きな発展を期待しましたが、後々それが多くの企業にとってはプラスではないことが明らかになります。
 
 規制緩和白書では、その目的を「わが国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ自己責任原則と市場原理に立つ公正な経済社会としていくとともに、行政のあり方について事前規制型から事後チェック型に転換する」としています。つまり、市場拡大や自由競争とは、国内企業のみならず海外からの企業にも日本市場を開放するという意味で、自己責任原則と市場原理主義とは、この自由競争に負けた場合、企業は倒産を余儀なくされ、それを国は助けることはしない、ということです。
 
 また、事前規制型から事後チェック型への転換とは、行政は事前に細やかな指導を行わない替わりに、事件や事故が発生した場合、経営者へその責任を強く追及するという意味です。言い換えれば自社内で規制同様のルールを作成し、社内でそのルールの遵守を徹底することを要求しているのです。
 
 
 規制は、産業分野に行政が積極的に関与・介入することにより、労働者、消費者の安全と健康、産業の健全な育成、中小企業の保護、農業と国民の食生活の安定などを目的に設置されていました。規制が日本企業の最低限のリスク管理を行っていたのです。規制が緩和されると、その本来の意味を理解していない企業は、「緩和」という言葉だけに着目し、その裏にある「自己責任」という言葉を忘れてしまいます。そのため、コスト削減を目的に安全確認工程を削除し、実際に遊園地のジェットコースター事故や製造工場の大火災などが発生しています。
 

 米国の専門家は、「企業における多くのリスクは、生産性の向上、無駄の削除、コスト削減といった企業経営への圧力から発生する」といっています。規制緩和後競争が激化し、価格競争のためコストの削減ばかりを追及すると、その圧力から担当者が法規制に反した行動を取る可能性も出てきます。
 食品業界における材料の産地偽造や虚偽記載などは顕著な例といえます。
 リスクマネジメントはこのような社会環境の変化が与える企業内への影響もリスクと捉え、予めそれを管理するためのシステムです。それは、ただ単に社内活動を監視するという意味ではなく、社会環境の変化に伴い社内体制を改善し対応しながら発展するための戦略です。

 
 
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