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リスクマネジメント Lesson
 8.BCP(事業継続計画)
 
◆ BCP(事業継続計画)とは   ◆ BCPの重要性
 
BCPの重要性
 BCPで最も重要な着眼点は時間です。発災後どの程度時間が経過するとどのような状況に陥るのか?何が起こるのか?を十分把握する必要があります。
 
 BCPでは、RTO(目標復旧時間)を設定します。このRTOは中断発生後市場におけるマーケットシェアを失うのはどのポイントか?どの時点を超えると、競合他社へ発注が流れてしまうかを理解することが重要となります。

RTOは業界や企業規模、企業の体力により大幅に変動します。例えば、人気ブランドの鞄製造業者、行列ができる羊羹屋さんなどは、復旧までにどれだけ時間を費やしても、復旧後ほとんどの顧客はまた商品を購入するでしょう。しかし、半導体や部品を扱う業者の場合、被災後一定の時間を経過すると、顧客は別の会社へ同じものを発注せざるを得なくなり、自社が回復した時点では既に市場を喪失していることが多々あります。新潟中越沖地震の際、日本の半導体メーカーの操業が停止し、韓国の半導体メーカーへ大規模なシェアを取られてしまいました。

  被災後の損失は、業界によっては時間に比例して拡大するのではなく、ある一定のポイントを過ぎた時点で急激に大きくなるのです。
 
 BCPの基本対策は、「代替」の準備です。代替案は2つ以上必要と専門家はいいます。
ある地域が大地震に襲われ、そこに自社の生産工場があることを想定してみましょう。工場が耐震補強のおかげでそれほど大きなダメージを受けず、生産はある程度継続できたとします。しかし、もしその工場が山間にあり、工場への道または納品先への道が崩壊すると、生産はできても物流経路が塞がれているため納品ができません。
通常、10トン以上のトラックが走れる道路は限られます。そのような状況を想定し、幹線道路は他にどの経路があるのか?小型トラックによる分別輸送は可能か?船による輸送は可能か?など、平常時に第2案、第3案を準備する必要があります。

近年では、頻繁に使用する道路の耐久性や万一崩壊した場合の、補修作業優先度なども行政とのヒアリングなどで情報を収集し、BCPに含むことが要請されています。
 
 BCPには、もう一つ重要な経営者判断があります。それは、被災した場所の復旧を一定期間放棄するという選択です。工場が被災した際、前述のRTOに間に合わないと判断される場合、商品の供給を継続させるためには過半数の職員を別の場所に出向させ、他の場所で生産するという選択です。

米国の9.11事件でワールドトレードセンターにオフィスを構えていた証券会社が、翌日には別の場所で操業していたという話は有名で、BCPの重要性を改めて企業に知らしめました。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |