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リスクマネジメント Lesson
 5.リスクの評価・査定
 
◆リスクの評価・査定①    ◆リスクの評価・査定②
 
リスクの評価・査定①
 リスクの認識、洗い出し後はそれらを評価します。リスクマネジメントは、認識されたリスクの全てを管理するわけではありません。どのリスクを管理するかを決めるのは、経営者です。リスク担当者は、経営者が判断する際の材料を準備する必要があります。
 
 リスクの評価は通常、そのリスクが顕在化する頻度と顕在化した際の影響度で行います。基準は図表のように4~6程度の段階を自社で設置します。この評価基準は、あまり詳細に分ける必要はありません。発生頻度、影響度ともに正確な数値が出るわけではないこと、および過去のデータ通りにリスクが顕在化するわけではないことがその理由です。
 
リスク評価基準表
 
 影響度は、顧客、収益、信用、取引先、人命などステークホルダーや経営資源を基準に考えると分析しやすくなります。ここでも重要なことは、経営者が「信用」を重んじる経営方針であれば、信用への影響度を重く評価するべきであり、「人命・安全」を重要視する製造業界などは、金融業、IT業とは別の尺度を持つのは当然のことです。影響度は数値、可能であれば金銭で評価することが経営者にとって判断しやすいことは明らかですが、全てのリスクを数値化することは困難です。
 
 米国の専門家の話によると、ある著名なリスクマネジャーにブランド・リスクについて質問した際、そのマネジャーはその会社のブランド・バリュー(その会社の名前の信用で商品を買っている人の売上)は総売り上げの30%であると答えました。専門家がその根拠を質問したところ、そのマネジャーは「勘です」と答えたそうです。顧客に対するアンケートや市場調査で、ある程度のブランド・バリューは算出できます。しかし、それには莫大な労力と費用が必要であり、実際にブランド・バリューは総売り上げの27.8%と出たところで、リスク管理の対象として大きな変化があるわけではありません。リスクの専門家は、1億と100億ほど見当を外しては困りますが、80億と90億では管理手法や対策にあまり影響は無いといいます。そのため、多くの影響度、影響内容は各リスクのリスクオーナーの「勘」に委ねられます。当然のことながら、リスクオーナーは過去の事例や平常時の運営状況など、その「勘」をサポートするための情報収集は必須となります。
 
 
  リスクマネジメントは、不確実性の管理です。しかし、その不確実性とは、事件や事故が起こるかどうかではなく、必ず起こると仮定しそれに対し、顕在化や影響の軽減策を平常時に準備、実行することです。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |