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リスクマネジメント Lesson
 5.リスクの評価・査定
 
◆リスクの評価・査定①    ◆リスクの評価・査定②
 
リスクの評価・査定②
 リスク顕在化の頻度、顕在化した際の影響度でリスクを評価した後、それらを可視化することをお勧めします。ただ単に一覧表を作成するよりも、リスクマップに各リスクを配置すると、経営者も判断しやすく対策の基本軸が明確になりやすいでしょう。
 
 経営者には通常、予測される損害の許容度を提示することが求められます。
 この許容度とは、いくらまでの損失は通常の業務として処理し、いくら以上の損失は予め顕在化時のために対策を講じるというラインのことです。経営者は往々にして損失が発生するこを基準にする考えを嫌い、社員に対し損失が発生しない事を強要します。しかし、事業運営には100%成功はあり得ません。
 
 米国では、リスクの許容度を理解していない経営者はその時点で会社の信用を失墜します。許容度とは、いくら以上の損害が発生すると会社運営に影響するのか?いくら以上の損害が発生すると、会社の存続に影響するのか?など、いくつかのステップに分類する必要があります。企業存続の許容度が10億円であれば、何も対策を講じない場合、たとえば大地震が発生すると倒産することになります。大地震が倒産に結び付く会社に人は投資するでしょうか。
 
 
 リスクの評価でもう一つ重要なことは、リスクの連鎖です。分析、評価によりリストアップされたリスクの中で、単体では影響度が低いと判断されながら、連鎖反応の影響で大きな損失に繋がる可能性があるものがあります。

 代替エネルギー開発で米国ではエタノールの研究が進み、トウモロコシの価格が一時高騰、小麦生産農家がトウモロコシの生産に転換したため小麦が大幅に不足し、それに伴いラーメンなど私たちの主食の価格上昇を導きました。

 このような現象は、事件、事故といった事象は関係なく、時代の流れが要因です。自社が不祥事を起こさなくとも、同業他社の事故が原因となり風評的損害を受けるケース、サプライチェーン関連で地球の裏側で発生した災害の影響を受けるケースなど、連鎖的な損失リスクはあなどれません。
 
 このようなリスクに対応するには、組織内それぞれの部署が責任範囲内の業務を分析、理解すること、経営者は自社が存続するための重要な業務、機能を十分把握することが重要です。組織内に不必要な部署など無いことは当然です。しかし、リスク管理での視点は売上、技術、信用といった企業存続におけるコアな部分を明確にし、それを徹底して管理することです。場合によっては他の業務を見捨ててまで、1つの業務を死守する必要があります。

 また、このような判断は、実際にリスクが顕在化し会社がパニック状態になった時に冷静な判断ができなくなるため、平常時に議論し予め準備する必要があります。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |