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リスクマネジメント Lesson
 8.BCP(事業継続計画)
 
◆ BCP(事業継続計画)とは   ◆ BCPの重要性
 
BCP(事業継続計画)とは
 BCP(事業継続計画)構築の要請が急速に進んでいます。BCPは主に製造業、特にサプライチェーンに属する製造業者には必須の危機管理体制と位置づけられています。
 
 日本企業がリスク低減のプロセスにばかり着目し、事件・事故発生後の損失や影響に対し、対策が不十分な事は既に指摘しました。BCPは、緊急事態発生後の影響に焦点を当てた対策のことです。リスクマネジメントが、社会環境や法規制、経済の変化を含むすべてのリスクを管理し、企業を存続、反映させることを目的にしているのに対し、BCPは企業に潜在するリスクの中でも、事故・災害や緊急事態から事業を守る対策が中心となります。つまり、コンプライアンス体制が法令違反リスクへの対策であり、BCPは事業の予期せぬディスラプション(中断・崩壊)による損失リスクを管理する対策で、どちらもリスクマネジメントの対策に変わりありません。
 
 BCPでは、事業運営の経営資源といわれるヒト、モノ、カネ、情報の1つまたは複数が事象により欠落することを考えます。新型インフルエンザはヒトが、金融危機はカネが、その全てが一挙に欠落する恐れがあるのが大地震です。
 
 企業が事故や災害による損失を考える際重要なことは、図が示すとおり、企業が被る損失とは災害が発生した時点における損害のみではなく、その後平常時と同様レベルへ復旧するまでの時間が大きく関係するということです。
 
BCPの考え方
 
 そのため、損失は棒線ではなく復旧までの時間を計算した面で考えなければなりません。
 BCPの目的は、災害が発生した時点での直接損失をいかに軽減するか、そして平常時と同じレベルへいかに早く復旧するかを考え、この面積を小さくすることを目的としています。
 いかに耐震性の高い工場を建築しても、中にある機械が破損してしまっては、その機械が改修できるまで工場は稼動しません。
 
 BCPでは、「ボトルネック」という言葉が使われます。これは瓶の首という意味ですが、瓶の中身は首の部分が詰まると外に出すことはできないことから、1つの物、または事象が全体をストップする、または影響を及ぼすことを指します。
 
 例えば、地震で工場の機械が破損したケースを想定すると、既存品を購入できる機械と比べ、特別発注した機械が破損した場合、簡単に再購入することはできません。つまり、高価な機械を守るのも重要ですが、特別発注の機械は発注後2、3ヶ月稼動停止します。それを考慮すると、守るべき機械は高価なものではなく、再購入に時間がかかるものであるべきです。
 
 このようにBCPとは、ディスラプションが発生した際、どのように対応し復旧するかを平常時に立案することです。
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |