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リスクマネジメント Lesson
 6.リスクの管理・対策
 
◆リスクの管理・対策①    ◆リスクの評価・査定②
 
リスクの管理・対策②
 リスクへの対応では、一般的に低減策が中心となります。日本では、リスクの顕在化を低減することが中心に考えられますが、欧米における伝統的リスクマネジメントでは、もう一つの低減策が中心でした。

それは、損失を低減することです。

「損失を発生させない努力」が中心である日本に対し、欧米では「リスクは必ず顕在化するもの」と捉え、損失の拡大に着目します。日本では、欧米的な損失の低減に対する努力、投資がまだまだ低いようです。この背景には、結果重視である米国と比較し、日本ではプロセス重視であることが考えられます。
 
 わかりやすい例では、スプリンクラーがあげられます。法規制を除外して考えると、日本ではスプリンクラー設置がまだまだ多くありません。火災発生の低減を目的に、日本では喫煙場所や火の元の管理に力を入れます。いわゆる「発生確率の低減」ということです。しかし、総務省消防庁の調べによると平成15年の出荷原因は、第1位が放火、第2位コンロ、第3位放火の疑いであり、放火と放火の疑いを合わせると全体の24.8%となります。つまり、いかに日常のプロセスで火災顕在化の低減を行っても、意図的に火をつける犯罪者がいる限り、低減の結果は安心な領域には達しないのです。
火災が発生した際、損失を低減するには、いかに早く消化するか?またはその火が広がることをいかに防ぐかが、着眼点となります。それには、スプリンクラーや防火シャッターが有効なのです。
 
  リスクへの対応策を考える際、プロセスを重んじる日本社会において陥りやすい状況は、本来損失を低減、または管理することが目的であるにもかかわらず、「リスク管理を行う」ことが目的となり、その効果に対する確認を怠ってしまうことです。
品質管理におけるISOの認証を受けた企業が、品質における不祥事を起こしているのは、管理体制の構築をゴールにしたため、認証取得後その体制がPDCAによって効率的に運用されず、認証を受けた目的を見失っていることが多いようです。ISO専門家は、「ISOの認証は、管理ができる体制が整っている」という認証であり、「管理ができている」という認証ではない、と力説しています。
 
 
 前述の火災リスク同様、企業に潜在する全てのリスクは顕在化の低減と顕在化した際の損失の低減を常に考慮する必要があります。経営者、およびリスク担当者は、2通りの低減策にはそれぞれどの程度のコストがかかるのか、その対策によりどれだけのリスク低減が可能なのかを理解し、経営状況や組織の信用などとのバランスを考え、リスク管理を行う必要があります。
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |