セミナー
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 毎年秋に開催される危機管理産業展(RISCON TOKYO)。今年度のRISCONのパネルディスカッションにリスクマネジメント協会の神田良理事長がRIMS日本支部として登壇した。
 

 

門家たちによるパネルディスカッション

 テーマを『想定が難しい新たなリスクへの挑戦』とし、過去の経験や知見に基づいたリスクの想定が困難になりつつある現代において、いかに新興リスク(エマージング・リスク。これまでとは異なる要因や環境の変化で発生する重大なリスク)に対応すべきなのかについて、リスクマネジメントの専門家が集まり、パネルディスカッションを通して意見を交わした。

 参加メンバーはモデレーターの中澤幸介氏(リスク対策.com編集長)を筆頭に、
 ・田代邦幸氏(BCI日本支部事務局/専門:BCM/本部・英国)
 ・真城源学氏(DRIジャパン理事/専門:BCM/本部・米国)
 ・松本一成氏(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長/専門:保険全般)
 ・八重澤晴信氏(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン 防災・減災(DRR)分科会協同幹事代表)
 そして、神田理事長を加えた、5名の専門家により行われた。
 

興リスクにどう対峙するのか

 ディスカッションを始める前に、まず中澤氏が『想定外』という事象についてノンフィクション作家の柳田邦男氏の言葉を紹介。
 東京電力・福島原発の事故調査・検証委員会に参画した際に、柳田氏は『想定外』には

A. 本当に想定できなかったケース
B. ある程度想定できたが、データが不確か、ないしは確率が低いと見られたために除外されたケース
C. 発生が予想されたが、その事態への対策に本気で取り組むと、設計が大掛かりになり投資額が巨大になるため、当面は起こらないだろうと楽観論を掲げて想定の上限を線引きしてしたケース

の3つが考えられると指摘。Aのケースが発生することは少なく、BかC、あるいはその中間のケースでの発生が大半を占めているということである。
よって、新興リスクを克服するためにはBとCを度外視できないという困難な前提が提示された。

 このうえで神田理事長からは、

既知の既知:知っていることを知っている=既存のリスク
既知の未知:知らいないことを知っている=新興リスク
未知の未知:知らないことを知らない=新興リスク

 とリスクを定義したうえで、既知のリスクに対して常にPDCAサイクルを回し、対策の見直し・改善を続けることでリスク感度を磨いていくことが、予測能力を高めることになり、新興リスクに対して素早く対応できる下地を培うことになるとの意見がなされた。

 この定義を元に、各パネリストもそれぞれの立場から新興リスクへの対応や、その対応の限界について発言、活発な意見が取り交わされた。

 

―ルハザードアプローチの実現に向けて

 このパネルディスカッションを企画した中澤氏によれば、このメンバーを招集した理由は、”オールハザードアプローチ”(あらゆる危機に対して対応できる考え方)を実現するためには、団体の垣根を越えた、様々な専門家からの意見を取り込み、共に学ぶことで“集合知”を創り込んでいくことが必要と考えたためとのこと。

 その意図どおり、多様な視点から意見が交わされた、会場も含めて皆が学び合ったセッションとなった。


 

 2022年11月30日(水)に開催する法人向けセミナー『先端事例に学ぶ「リスクマネジメント体制」の構築』はこのパネルディスカッションでモデレーターを務めたリスク対策.comの中澤編集長が登場。

 第一線で活躍するリスク管理担当者をパネリストに招き、最先端の事例を参加者と共有します。

 詳細は決まり次第、随時ホームページで公開します。企業でリスクマネジメントを担当する実務者の方は、ぜひご参加ください。