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研究報告&論文
2025年度リスクマネジメント論文 選考結果のお知らせ
 
総評
 本リスクマネジメント協会では、リスクマネジメントの普及、実践への貢献に向けて広く論文を募っています。今回も多くの論文を提出していただきました。提出された方々にお礼を申し上げます。

 リスクマネジメントでは、従来はリスクとして認識されていなかったが、新たにリスクとして認識される新興リスク、すでにリスクとしては認識されているが、環境に応じてそれらの発生が変化し、他の要因とも複雑に関連し合い、対応がより困難になるダイナミックリスクが大きな課題になります。そのため、リスクマネジメントでは、絶えずこうしたリスク事象を研究し、その対応に備えなければなりません。この意味でも、新たなリスク事象を取り上げて、その対応を研究することが必要となります。

  今回も、こうした新たなリスク事象を取り上げ、その研究を進めた論文が提出されました。自然災害は甚大な被害を及ぼすリスクイベントです。能登半島地震によって引き起こされた被害に対して、個別的な組織でのBCPを超えて、地域社会全体として活動を再起、継続させるための対策、地域継続計画(DCP:District Continuity Plan)に向けて、その方向性を検討した研究。同様に地震に対して総合的リスクマネジメントの手法を用いて、事前の予防策、災害直後の緊急対策、そして長期的復興策といった流れで費用対効果を評価した最善策を検討する研究。そして現在散見される企業不祥事に対して、再発防止のために設けられる第三者員会が、果たしてそうした役割を実際に果たしているのかということをリスクマネジメントの視点から検討を加えた研究。いずれも非常に興味深い論文でした。

 今回は、3人の専門委員の皆さんに論文を審査していただきました。審査の視点としては、『リスクマネジメントの普及と発展』という当協会の目的に合致していること、取り上げたリスクが、それに対応する組織にとって有益な実践的提言であること、そして高度な知識や経験を活かすとともに、データなどの客観的な根拠をもって新たな知見を見出してリスクマネジメントの発展に貢献していること、以上の3点を考慮しました。

 リスクマネジメントでは事後対応はもちろん重要ですが、事前にリスクに対する準備態勢を堅固に整えることも不可欠です。しかし、一般的には、こうしたことを理解していても、準備態勢を整えることは後回しになりがちで、結果としてリスクの影響を大きくしてしまうことが見受けられます。リスクマネジメントを強化するためには、なぜ準備できないのかといった原因にまで踏み込み、その対策を検討することも求められます。これによって、リスクマネジメントの実効性を高めることにつながるからです。

 審査委員の皆さんは、こうした共通理解に基づいて、審査を進めてくださいました。その結果、今回は受賞論文として、以下を選びました。

論文審査委員会 委員長 神田良
 
論文審査委員会
委員長  明治学院大学 名誉教授 神田良
委 員 
(五十音順)
東京理科大学 元教授 奥村哲史
ゼウス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長  白井邦芳
  慶應義塾大学 商学部 教授 柳瀬典由
 
 
 最優秀賞
該当なし
 
 優秀賞
企業リスク研究会 BCP・BCMグループ
 『「令和6年能登半島地震」が提起する新たなBCPの在り方について』
講評
 能登半島地震被害状況を精査し、震災によって企業のBCPがどのように機能したのかについて既存の調査報告書から検討を加えた。その検討から個別企業を超え、企業のBCPとの連動を踏まえた地域による継続計画(DCP)が必須であることを確認し、地域におけるそうしたBCPのあるべき全体像を提示している。提示された全体像は地域における社会・経済活動を継続させるための仮説的な基本的フレームワークである。これをベースにして、それをどのように構築し、機能させるのか、また理論的なフレームワークを実践的、実行可能なものにするためにはどのような修正・改善が必要となるのか、こうした実践的なリスクマネジメントに向けた、さらなる研究での展開を期待する。

 
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