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研究報告&論文
2024年度リスクマネジメント論文 選考結果のお知らせ
 
総評
 本協会では、今年もリスクマネジメントの普及、実践への貢献に向けて広く論文を募りました。今回も多くの刺激的な論文を提出していただきました。提出された方々にお礼を申し上げます。
 今年度も、3人の専門委員の皆さんに論文を審査していただき、私がその結果をまとめました。審査の視点としては、従来通り、当協会の目的であるリスクマネジメントの普及と発展に対して合致していること、取り上げたリスク課題に関して、そうしたリスクに対応する組織にとって有益な実践的提言であること、そして高度な知識や経験を活かすとともに、データなどの客観的な根拠をもって新た知見を発見してリスクマネジメントの発展に貢献していることを考慮しました。
 評価の対象となった論文は3本でした。その一つは「我が国企業のリスクマネジメントの課題に潜む保険への意識」で、日本の保険制度が米国のそれとどのように違うのか、国による制度環境の相違を明らかにしたうえで、米国での代表的なリスクマネジメント実態調査と比較して、日本のリスクマネジメント体制についてアンケート調査を実施し、この調査データに基づいて、日本のリスクマネジメントの限界を明らかにしています。2つめは「原材料・部品の調達リスクマネジメント促進要因に関する分析」です。サードパーティ・リスクは企業にとっての大きなリスク課題になっている現況を踏まえて、調達リスクマネジメントを促進させる要因に焦点を当て、経営者の調達リスク認知と業界CSRルールとが調達リスクマネジメントを促進させることを、公表データを用いて統計分析することで検証しています。最後が「コーポレートガバナンスとエマージングリスク管理実務について」です。ISO/TS31050で示された新興リスクマネジメントに関する指針、考え方に対応して、それを開示している日本企業の少数の事例を分析し、その現状を整理しています。
 いずれも、リスクマネジメントでの先端的な動きに注目して、実態に基づいて調査分析を行った素晴らしい研究です。審査委員会では、上記の基準に基づき、しかも挑戦的な研究課題であることを理解した上で、審査を実施しました。その結果、今年度は受賞論文として、次を選びました。
論文審査委員会 委員長 神田良
 
論文審査委員会
委員長  明治学院大学 名誉教授 神田良
委 員 
(五十音順)
東洋大学 経営学部 教授 奥村哲史
ゼウス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長  白井邦芳
  慶應義塾大学 商学部 教授 柳瀬典由
 
 
 最優秀賞
該当なし
 
 優秀賞
危機管理広報グループ
 「我が国企業のリスクマネジメントとの課題に潜む保険への意識」
講評
 独自のアンケートに基づいて、米国企業と比較した日本企業のリスクマネジメント体制の遅れと、その中での保険の位置づけを明らかにした点は評価される。とはいえ、米国においても、その制度の中でリスクマネジメント体制を強化できている組織もあれば、そうでない組織もある。同様に、相対的に後れを見せている日本企業にあっても、リスクマネジメント体制の強化に挑戦する企業もあれば、そうでない企業もある。国の制度といった与件の下で、組織がリスクマネジメント体制を強化できる余地は相当ありうると推測される。こうした環境の制約の下で、いかにしてマネジメント体制を強化できるのかといった、日本企業にとっての実践的な知見をさらに究明することを期待する。
延東 晃
 「原材料・部品の調達リスクマネジメント促進要因関する分析」
講評
 先行研究に基づき、調達リスクマネジメントを組織的に推進するための主要な要因を明らかにしたことは評価される。とはいえ、著者も今後の研究課題として指摘しているように、調達リスクマネジメントの実施に責任を担う実務家からすると、そうした促進要因を組織として向上させるためにはどのような組織的な運営、仕組みなどを構築することが必要となるのか、さらには、仮説検証された推進要因は他領域のリスクマネジメント体制の強化にとっても重要であろうと推測されることから、調達リスクマネジメント体制強化に固有となる推進要因は何のかといった知見を明らかにする、今後の研究に期待する。

 
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