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リスクマネジメント Lesson
 リスクマネジメントの基本
リスクマネジメントの基本
③ あたりまえ

 どれだけ長い期間一緒に働いていても、人のモノに対する理解は異なるものです。同じ職場で、ある人は「あたりまえ」と思っていても、他の人は「えっ、そうだったの!」ということは頻繁に起こります。日本では「阿吽の呼吸」を求める傾向がありますが、現代社会のように瞬時に多くの情報を入手できる環境下では、それぞれが持つ情報量により、物事に対する判断が異なるのはやむを得ません。
  米国では、多くの異なる文化、環境で育った人々が同じ職場で働くため、些細なことから一つ一つマニュアルや規定で取り決めます。いわゆる「常識、あたりまえ」という考えは存在しないのです。そのため、「あたりまえのこと」というのは文章で明確に表現され、周知徹底していること以外にありません。日本ではどうでしょう?「単一民族国家だから、常識的なことは言わなくてもわかる」そんな考えをもっている人はいないでしょうか?日本社会もグローバル化が進み、海外から多くの労働者がいるだけでなく、携帯電話が夢の世代で育った50代以上と携帯電話のみならずスマートフォンが主なコミュニケーション・ツールとして育った年代の人の常識感覚が同じであると思えません。
  これはどちらが正しいという問題ではなく、あたりまえと考えることも、明確に文書化すること、リスクの洗い出しでは、あたりまえと考えられるリスクや要因も全てリストアップすることが重要です。

④ あいまい
 リスクマネジメントで避けなければならないあいまいさとは、「危険である」、「注意する」といった感覚や抽象的な表現です。既に説明したとおり、リスクとは「損失」に発展する可能性のあるものや状態です。ただ単に「危険である」だけではなく、どのような事故に発展しどのような損失が発生するのか、「注意する」とはどのような行動をとることなのかを明確にする必要があります。
 また、日本では責任の所在が明確になっていないことが多々あります。組織内において複数の部署に関係するリスクへの対応など、責任の所在が明確になっていないため、互いの部署がもう一方の部署が管理するだろうと考え、結局そのリスクは手付かずになってるケースが多々見られます。

   
   
 

4) リスクマネジメントはシステム(体制)で管理する

組織におけるリスクマネジメントは、悪い社員を見つけることではありません。コンプライアンス「事件・事故その他企業・組織にとって好まざる結果をもたらす事象は、必ず発生する」との考えが基本です。たとえ顕在化確率が非常に低いと判断されるリスクでも可能性がゼロになることは無いのです。そのため、損失が発生する可能性を低減する努力(活動)、及び顕在化した際の対応をあらかじめ準備、取り決めしておくことがリスクマネジメント活動の基本となります。そのため、リスクの認識を行う際には、以下の4つの「あ」を排除する姿勢が必要です。

 ① あってはならない
 ② ありえない
 ③ あたりまえ
 ④ あいまい

① あってはならない
 日本企業の特色として、間違いが許されない、「あってはならない」という暗黙の文化がいまだにある組織が多く見受けられます。このような組織文化を持つ企業では、正確なリスクの認識が非常に困難になると同時に、実際に事件・事故が発生した際、隠蔽という行為に発展する大きな可能性を秘めています。実際に、大手企業が法令違反や情報開示の遅れで、信用失墜、ブランド喪失へと発展した事例は記憶に新しいところです。

② ありえない
 「あってはならない」と同様に、「ありえない」という職員の思い過ごしが、重要なリスクの見落としへとつながります。東日本大震災の際の津波の高さが顕著な例です。リスクマネジメントでは、一定の事象を想定した上で対応を検討しますが、想定を超えるという想定も必ず必要となります。
「ありえない」という考えは、往々にして業務に一番近い担当者が持ちます。