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【特集】岐路に立つ第三者委員会と「ビジネスと人権」
リスクマネジメントTODAY最新号表紙
 毎月のように企業不祥事が発覚し、第三者委員会や社外調査委員会による調査結果が公表されている。しかし、その水準はまちまちだ。短時間でよくここまで問題の本質に迫ったと評価されるものがある一方で、委員の独立性に疑問が呈されたり、事実認定が甘く、説得力に欠けると指摘される報告もある。そもそも日弁連のガイドラインに準拠している第三者委員会は一部に過ぎない。
 そうした中、兵庫県の齋藤知事の言動が注目を集めた。告発対応を「違法」とした第三者委員会の結論を、知事が否定したのだ。日弁連は第三者委員会の使命を「すべてのステークホルダーのために調査を実施して対外公表することで、企業等の信頼と持続可能性を回復すること」と明記しているが、第三者委員会の設置者みずからがその結果を受け入れないことは想定していない。県民の税金で行われた第三者委員会の結論を受け入れないのであれば、何のための調査だったのか疑問が残る
 かねてから第三者委員会には、中立性と信頼性の確保や、スピードと正確さをいかに両立されるかなどの課題が指摘されてきた。このうち後者については、AIをはじめとするテクノロジーが大きく貢献すると期待されている。しかし、より本質的な問題は調査報告書に法的拘束力がないことだろう。兵庫県のケースはまさにこの課題を浮き彫りにしている。また調査の結果、仮に被害が認定されても、これを救済および回復する仕組みや機能はなく、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」が掲げる「救済へのアクセス」には対応していない…