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【特集】人材不足の乗り越え方・かわし方
リスクマネジメントTODAY2024年5月号表紙

最優先課題となった人手不足
 情報セキュリティよりも、地政学リスクよりも、いま企業にとって最大の脅威となっているのが人手不足である。働く人がいなければ事業は続けられないという当たり前のことが、ここまで経営を脅かした時代はない。

 デロイト トーマツが上場企業を対象に2023年に行った調査では、「人材不足」が優先課題のトップに挙げられた。前年に続く1位で、2位の「原材料・原油価格の高騰」、3位の「サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報漏えい」の倍近いスコアを記録した。また、日本商工会議所が全国の中小企業に行った調査でも、7割近くが人手不足の状況にあるとし、そのうち6割以上が「非常に深刻」と回答した。いまや人手不足は、企業規模や地域に関係なく、深刻な経営リスクとなっている。

 確かに職種で見れば、一般事務職などの有効求人倍率は低く、人余りの状況が続く。その背景には、定型業務などを外部委託するBPO(Business Process Outsourcing)や、業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)などの普及で、一般事務の仕事がそもそも減っている影響がある。その一方で、建設従事者や介護従事者など、人手に頼る部分が大きい職種の有効求人倍率は全職業の平均を大きく上回る。
 このように効率化や自動化が進む職種と、さまざまな理由でそれが困難な職種との間の人手をめぐる乖離は大きい。しかし、人が関わる領域が残る以上、日本が直面する生産年齢人口減少という現実が産業界に重くのしかかることに変わりはない。
 人手不足を理由とする倒産も急増している。帝国データバンクによれば、2023年度の人手不足倒産は、前年度の倍以上の313件と過去最高を記録した。業種別では建設(96件)が最も多く、物流(46件)が続き、労働時間の上限規制が適用される2024年問題の影響の大きさが……