ESG、DEIへのバックラッシュ( 揺り戻し)が止まらない。トランプ大統領によるパリ協定からの離脱は最たるものだが、その震源はより根深いところに存在しているようだ。かつて米国で「サイレント・マジョリティ(物言わぬ大衆)」と呼ばれた低所得の白人男性を中心とした不満の燻り。企業に重くのしかかるDEI施策やESG開示の負担。そこに実利はあるのか。さらに、企業はどこまで政治的、思想的であるべきかという問題も残されている。
ESG、DEIへの反動は日本でも見られる。内閣府の『性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査』(2022年)では、20代、30代の若い男性ほど、「女性社員の昇格や管理職登用のための教育・訓練は必要ない」とする回答が多かった。女性躍進推進のせいで自分達が割りを食っているという思いがうかがえる。「あちら」と「こちら」という2つ以上の集団が形成されれば、そこに何らかの対立が起きるのは避けられない。
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