RMリソース
リスクマネジメント Lesson
 3.リスクの認識
 
 
◆排除すべき4つの「あ」  ◆リスクの分類  ◆手法  ◆現場のリスク
◆戦略リスク  ◆コンプライアンス  ◆財務リスク
 
 
現場のリスク
 製造やサービス他オペレーションにおけるリスクを認識するには、ヒヤリハット報告書が有効です。
ヒヤリハット報告書は前に簡単に説明した通り、実際に事件・事故には発展しなかったが、1つ間違えれば大きな損失が発生したと思われる事象を、担当者が報告するシステムです。
 
 病院等医療業界では、インシデントレポート等の呼び名で多く実践されていますが、誤った観点で利用されている事が非常に多く見られます。
この報告書の目的は、「人間だれでも間違える。ミスが発生するのはその業務の流れ、システムに欠陥がある」という認識で、どの作業や工程で多くの人が同じようなミスを犯しそうになっているのか?を追求することを目的としています。そのため、この報告書を有意義に使用するには、数とどの場面でという内容が重要であり、「誰が」ということは必要ありません。

 しかし残念ながら、現在製造や医療現場で実施されている同レポートは、「私は、本日AさんにXの薬を投与するべきところをYの薬を投与しそうになりました。集中と確認が足らなかったためで今後十分気をつけます」というように、反省文になっているばかりか、担当者は仕事終了後にこの報告書を書くため、疲れた身体にネガティブなイメージで一日を終えることとなり、業務改善には繋がっていません。
 
 このような報告書で求めるのは詳細ではなく量、あくまでもデータです。同様のミスは何時ごろ発生することが多いのか?その時のスタッフ体制に特長はないか?等ヒヤリハット発生の関連性を調査するものです。

 例えば、病院にて誤薬投与の報告が朝方多いのであれば、それは夜勤の勤務体制が重労働であるため、スタッフの疲労度が高い可能性があります。また、間違いやすい薬名、容器などが原因の場合もあります。夜勤担当者の疲労が原因の可能性があるのであれば、夜勤担当者に「何度も確認しろ」と命令するより夜勤明けは必ず疲労から思考能力が低下すると判断し、投薬は全て早番スタッフが行うようにすることにより、事故発生を低減することができる可能性があります。

 また、薬の名前、容器が問題の場合は容器を変えることや容器に色の違いをつけることにより防止できる可能性もあります。
 
 この手法は「ハインリッヒの法則」を基本としています。この法則とは米国の労働災害研究家が発表した統計で、大きな事件・事故が1件発生する場合、その警鐘となる小規模事故が30は発生しており、そのヒヤリハット件数が300件はあるというもので、六本木ヒルズの回転ドア事故等多くの事故がこの比率にあてはまっています。
 
 
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