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リスクマネジメント Lesson
 3.リスクの認識
 
 リスクマネジメントで最も重要なのは、リスクの認識です。なぜならば、当然のことながらリスクは認識していなければ管理はできません。専門家は、「企業は潜在するリスクを十分に認識できれば、その企業におけるリスクマネジメントの6割は達成しているといっても過言ではない」といっています。
 
 
排除すべき4つの「あ」  ◆リスクの分類  ◆手法  ◆現場のリスク
◆戦略リスク  ◆コンプライアンス  ◆財務リスク
 
 
排除すべき4つの「あ」
 リスクの認識を行う際、まず以下の4つの「あ」を排除しなければなりません。
 
1.ありえない
 リスクが損失へと発展する場合、多くは何万分の1の確率で起こる事象がいくつも連鎖し、数値上では何百億分の1の発生確率しかない事故が頻繁に発生しています。同時に2008年のリーマンショックによる世界的金融危機、日本航空の倒産など、多くの人がありえないと思っていたことが現実化しています。
 様々なリスクが顕在化することは確率の高低の違いはあれど、可能性がゼロであることはありません。また、リスク管理により顕在化の可能性をゼロにすることも不可能です。
 
2.あってはならない
 日本社会、特に消費者は企業や製品に対し「完璧」を要求する傾向が強いものです。その要請に応えようと企業側は社員へ圧力をかけます。すると社員は純粋な事故であってもそれを隠すようになり、後々に隠ぺい工作が発展し大事件となります。リスクマネジメントでは、リスクは必ず顕在化する、人間は間違えるということを受け入れることが基本となります。リスク管理は、リスクが顕在化することを軽減することと同時に、顕在化した際にはそれを受け止め、誠実な対応をとる準備をすることも大きな柱となります。
 
3.あたりまえ
 異文化で育った社員が集まり組織化している米国企業では、日本ではあたりまえと思われることがマニュアルに数多く記載されています。文化や風習の違いであたりまえのことが共通ではないからです。そのため、米国のマニュアルは日本のそれに比べ分厚くなっています。日本では長期間にわたり単一民族国家であったため、「常識」と勘違いされる事項が多く、その分コミュニケーションが不足する傾向にあります。企業間取引、社内コミュニケーション等お互いの「常識」に大きな差が生じている事が多いため、確認作業が重要となります。
 
4.曖昧さ
 あたりまえが無意識の理解の違いであるのに対し、曖昧さは意識的に明確にしないことを指します。日本の習慣でNOはハッキリとはいわずに相手に伝える、または会議においても決定内容が明確にならずペンディングのまま窮地に追い込まれる状況に陥ることが頻繁に見受けられます。
 
 
 日本には「縁起が悪いことは口にするな」という文化があります。しかし、口にしなくても悪いことは起こります。リスクの洗い出しとは、「縁起の悪いこと」をいくつ列挙できるかが焦点となります。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |