リスクマネジメント協会では、今年もリスクマネジメントの普及、実践への貢献に向けて広く論文を募りました。研究グループでの研究成果を含めて、多くの刺激的な論文を提出していただきました。提出された方々にお礼を申し上げます。
今年度は、3人の専門委員の皆さんに論文を審査していただき、私がその結果をまとめました。審査の視点としては、従来通り、当協会の目的であるリスクマネジメントの普及と発展に対して合致していること、取り上げたリスクに関して、そうしたリスクに対応する組織にとって有益な実践的提言であること、そして高度な知識や経験を活かすとともに、データなどの客観的な根拠をもって新た知見を発見してリスクマネジメントの発展に貢献していることを考慮しました。
評価の対象となった論文は4本でした。リスクマネジメントが保険から始まり、その機能を全社的リスクマネジメントへと拡大してきた時代的変遷から、保険との関わりに焦点を当て、両国の保険に対する制度的な相違も含めて、日米のリスクマネジメントを比較し、日本のリスクマネジメントへの示唆を究明しようと試みた論文。日本経済が低迷する中、ロシアのウクライナ侵攻や米中間に典型的にみられる経済的な分断といった地政学上のリスクなど、経済安全保障がグローバルなビジネスを展開する企業にとって大きなリスクとなっている現状を背景として、こうしたリスクに対して、危機管理としてどのように取り組むべきかを考察する論文。発生時の影響は大きいことが想定されるとしても、その発生確率が非常に小さいリスク、またはその発生や影響がほとんど考慮されてこなかったリスク、こうしたエマージングリスクが頻繁に発生することに対応して、どのように危機管理を改善し、BCPに落とし込んでいくべきかを考察する論文。組織の社会的責任として、ますます経営、戦略において対応しなければならなくなっているSDGs、こうしたSDGsが組織に対してどのようなことを求めているのか、また求めようとしているのか、そうした要請に対して、リスクマネジメントとしてどのように取り組んでいかねばならないのかを検討する論文。いずれも、リスクマネジメントの課題として避けて通れない重要なものであり、その研究成果は多くの示唆に富んだものでした。もちろん、大きな課題であり、現在進行形のリスク課題であることから、最終的な結論を導き出すことは難しいことではあります。とはいえ、果敢に、真摯に研究に取り組まれていました。
審査委員会では、上記の基準に基づき、しかも挑戦的な研究課題であることを理解した上で、審査を実施しました。その結果、今年度は受賞論文として、次を選びました。
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