渡辺氏からは、近年発生した企業不祥事の第三者委員会報告書145件を調査、分析した結果、さまざまな共通点、傾向があるとの報告がされた。分析した145件の不祥事では、111件が意図的にルール違反を行ったものであり、その多くは日本企業が持つ「共同的一体感」という組織文化が関わっているという。欧米企業は、適材適所に人員を雇用するのに対し、日本企業は新卒を採用し、組織内で教育する組織運営が特徴である。
そのため、働く社員の「感情的な一体感」が求められ、組織の役員は「尊敬すべき立場」という位置づけに置かれる。この組織構成は、目標達成に関し、「できないと言えない環境」や経営者からの不正要求に対する服従、経営者からのプレッシャーによる「忖度不正」などを引き起こすリスク要因となっている。また、不正の根本的要因が、経営陣に起因するため、設置されている内部通報制度を利用しても「是正されないのではないか」と社員が考えてしまうケースもあったようだ。
このように、日本企業の不祥事には、日本社会独特の企業風土が関連していることから、同氏は経営者が中心となる組織のガバナンス改革の必要性を強く訴えた。企業風土を変えるには、まず経営者(陣)が先頭に立ち、社会を中心としたステークホルダーの要請を理解し、組織としての方針を明確にすると共に、それに伴う行動を実施することが重要であると述べた。 |