リスクマネジメント協会では、今年もリスクマネジメントの普及、実践への貢献に向けて広く論文を募りました。多くの刺激的な論文を提出していただきました。提出された方々にお礼を申し上げます。
今年度も、全社的リスクマネジメント(ERM)での重要な概念、中核的な課題に関して、挑戦的な研究を行った成果を発表していただきました。昨年度に続き、今年度も対面での活動ができないため、バーチャルで研究会を実施しました。積極的なバーチャルの活用へと世界が変化したことに合わせて、研究会もそれに対応しました。幸い、バーチャル研究会は場所の制約を超えるというメリットがあります。特定の地域をベースとした研究会を超えて、より広い地域から新たなメンバーシップを募ることができ、より多様な考え方の交流に向けて動き出せたかと思われます。もちろん、対面での議論といったメリットは享受できなかったかもしれません。しかし、そうした制約がある中でも、皆さん、魅力的な研究課題を掲げられ、力作を提出して下さいました。
今年度も、審査委員会では、私を含め4人の専門委員の皆さんに論文を審査していただきました。審査の視点としては、当協会の目的であるリスクマネジメントの普及と発展に対して合致していること、取り上げたリスクに関して、そうしたリスクに対応する組織にとって有益な実践的提言であること、そして高度な知識や経験を活かすとともに、データなどの客観的な根拠をもって新た知見を発見してリスクマネジメントの発展に貢献していることを考慮しました。
評価の対象となった論文は3本でした。コロナ対策の成果を評価するといったリスク対策評価のフレームワークを検討する研究、リスクマネジメントを実務で使えるようにするための課題を検討する研究、そしてサステナビリティが要求される時代変化の中で、企業の社会的な存在意義を明確して存続リスクに対応するためにリスクアペタイトのフレームワークを活用することの可能性について検討するものでした。いずれも、リスクマネジメントでの中核的な課題で、その研究内容は当協会の研究としてふさわしいもので、その研究成果は実践にとって有益な示唆を提供できる可能性を持つものでした。しかし、その課題の重要性、大きさのゆえに厳密な論理展開、適切な事実データの厳密な分析を必要とするものでありました。時間を要する研究です。この意味で、いずれも中間報告的な研究です。審査では、こうした視点も加えました。
審査委員会では、こうした共通理解に基づいて、審査を実施しました。その結果、今年度は受賞論文として、次を選びました。
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