セミナー
セミナー
 

 
 平成30年3月16日、TKPガーデンシティ PREMIUM 京橋に於いて、企業を対象とした「コンプライアンスリスクの有効な管理方法とは」と題したセミナーを開催しました。近年、日本を代表する大手企業の不祥事が発覚し、世間を騒がせました。コンプライアンスは現代社会では常識であり、法的にも要求されているため、各企業も真剣に取り組んでいるなか、なぜいまだにコンプライアンス違反が発生するのか?また、コンプライアンス違反を企業のリスクという視点で考えた場合、そのリスクはどのように管理しなければならないのか?をテーマに、各分野の専門家を招聘し、セミナーとパネルディスカッションを行いました。会場は、約80社計100名の参加者で埋まりました。
 
 

 

 セミナー1 「企業倫理を基盤とする企業形成」

講師: ロバート・カートライト Jr.  2018年度RIMS理事長
米国ブリヂストン Division Manager

【略歴】
2018年RIMS理事長、米国ブリヂストン社北東地域における小売事業部門で環境、健康、安全およびサステナビリティを担当する事業部長。35年以上にわたり、リスクマネジャーとして活動するともに、司法関係のリスクにも携わっている。

RIMSの2018年度理事長として日本支部訪問のために来日したカートライト氏は、RIMS初の黒人理事長であり、RIMS初の「保険購入を担当しないリスクマネジャー」でもある。現在、米国ブリヂストン社で小売販売部門の環境、健康、安全、サステナビリティを担当しているが、職歴はコンプライアンス部門が主であるという。

 同氏は、有効なコンプライアンスには、経営者のコミットメントが必須であることを強調した。組織または経営者が、組織としての方針を明確にし、常に方針に則り経営判断を行うことが重要である。ブリヂストン社の場合、「安全」が常に最優先されるという。最優先とは、その言葉のとおり、「利益」よりも重要視しているということだ。「安全」を最優先に全社員が物事を考え、判断、行動する社内環境が整えば、コンプライアンスは自動的に順守されると解説した。

 また、同氏は社員のコンプライアンス教育を実施する際、「コンプライアンスとは、ルールを正しく守ることではなく、正しい行動は何かを考えることである」と教育しているという。場合によっては、既存のルールが現状の業務環境に則していない場合がある。その場合は、現場職員が中心となり、その問題を提起し、必要に応じてルールを改定できる環境を整えることも、コンプライアンス活動の一環であると語った。

 
 

 セミナー2「多発する不祥事の原因はどこにある?」

講師: 渡辺 樹一氏   一般社団法人GBL理事、
東証1部上場企業 社外取締役、 米国公認会計士

【略歴】
一橋大学卒、伊藤忠商事入社。エネルギー部門にて石油開発等に従事。2011年からジャパン・ビジネス・アシュアランスにて企業統治・内部統制構築・上場支援などのコンサルティングを手掛ける。早稲田大学非常勤講師、東証1部上場会社の独立社外取締役。

辺氏からは、近年発生した企業不祥事の第三者委員会報告書145件を調査、分析した結果、さまざまな共通点、傾向があるとの報告がされた。分析した145件の不祥事では、111件が意図的にルール違反を行ったものであり、その多くは日本企業が持つ「共同的一体感」という組織文化が関わっているという。欧米企業は、適材適所に人員を雇用するのに対し、日本企業は新卒を採用し、組織内で教育する組織運営が特徴である。

 そのため、働く社員の「感情的な一体感」が求められ、組織の役員は「尊敬すべき立場」という位置づけに置かれる。この組織構成は、目標達成に関し、「できないと言えない環境」や経営者からの不正要求に対する服従、経営者からのプレッシャーによる「忖度不正」などを引き起こすリスク要因となっている。また、不正の根本的要因が、経営陣に起因するため、設置されている内部通報制度を利用しても「是正されないのではないか」と社員が考えてしまうケースもあったようだ。

 このように、日本企業の不祥事には、日本社会独特の企業風土が関連していることから、同氏は経営者が中心となる組織のガバナンス改革の必要性を強く訴えた。企業風土を変えるには、まず経営者(陣)が先頭に立ち、社会を中心としたステークホルダーの要請を理解し、組織としての方針を明確にすると共に、それに伴う行動を実施することが重要であると述べた。

 
 

 セミナー3「広報の重要性とリスクコミュニケーション」

講師: 白井 邦芳氏    一般財団法人リスクマネジメント協会 顧問
ゼウスコンサルティング株式会社 代表取締役社長

【略歴】
早稲田大学教育学部卒業。AIU保険会社に入社。危機管理、リスクマネジメント、コンプライアンス、内部統制、事業継続、企業再生、企業価値向上、ワークライフバランスなどの専門家として2000件以上の広い範囲で活躍の場を広げている。

会情報大学院大学で教授として教壇に立つ白井氏は、現代社会のSNS(Social Networking Service)の脅威を解説するとともに、不祥事や企業で発生する事件、事故などの事象による影響を最小化するためには、リスクコミュニケーションの準備が非常に重要であると述べた。

 近年、社会のグローバル化が進み、企業へは「説明責任」が強く求められる。そのため、企業のリスク管理においては、ステークホルダーに影響が及ぶ事象が発生した際は、正しい方法で、積極的に対応することが、顕在化したリスクの影響を最小化する最も有効な対策である。上場企業や大規模企業、消費者と直接関わるB to Cの事業を行っている企業は、マスメディアを介して「説明責任」を果たすケースが多い。そのため、記者会見やインタビューといったマスメディアへの対応は、企業への影響を左右する大きなポイントとなる。

 同氏は、リスクコミュニケーションの成功事例として、アスクルの火災発生時の対応を解説した。同社は、火災発生時、自社の重要なステークホルダーを十分理解していた。工場の近隣住民、自治体、行政、警察、メディア、一般消費者、環境、取引先、その他ステークホルダーに対し、同社は火災発生時点から、積極的な対応を進めた。ホームページでは、頻繁に現状を報告する情報を発信し、述べ4,300人を超える社員が何度も近隣住民宅を訪問し、お詫びをするとともに物的、人的被害を確認したという。これまでに例のない長期間燃え続けた工場火災の影響を、最小限にすることができたポイントを解説した。
 
 
---参加企業---
・株式会社プレジデント・コーポレーション・ALPHA MRS株式会社(株式会社UKCホールディングス)・Chubb損害保険株式会社・JP損保サービス株式会社・JXTGエネルギー株式会社・KISCO株式会社・NECネットワーク・センサ株式会社・NHK営業サービス株式会社・SOMPOリスケアマネジメント株式会社・アクサ生命保険株式会社・アップウエルサポート合同会社・アルプスファイナンスサービス株式会社 ・アンダーソン・毛利・友常法律事務所・イオンドットコム株式会社・栄研化学株式会社・カシオ計算機株式会社・株式会社 理経・株式会社ステラリンク・株式会社トポスエンタープライズ・株式会社ホンダユーテック・株式会社串カツ田中・株式会社徳育経営研究所・株式会社ティップネス・株式会社永谷園ホールディングス・キユーピー株式会社・コミュニティワン株式会社・ジャパン・リスク・スペシャリスト株式会社・ジャパンフーズ株式会社・セコム株式会社・西日本高速道路株式会社・日水製薬株式会社・日本ATM株式会社・日本化薬株式会社・不二製油グループ本社株式会社・富士フイルム株式会社・三菱ケミカル株式会社・メタウォーター株式会社・伊藤忠リーテイルリンク株式会社・伊藤忠紙パルプ株式会社・花王株式会社・株式会社 ルネサンス・株式会社 松屋フーズ・株式会社NSD・株式会社ウイルプラスホールディングス・株式会社オリエンタルランド・株式会社カインズ・株式会社キャピタルグッズ・リサーチ&アドバイザリー・株式会社グッドコムアセット・株式会社さくらビジネス・株式会社シーボン・株式会社ゼネラルインベストメント・株式会社ベルーナ・株式会社マスダック・株式会社荏原製作所・株式会社社楽パートナーズ・株式会社大戸屋ホールディングス・株式会社筑水キャニコム・株式会社富士通ビー・エス・シー・株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス・坂口公認会計士事務所・三菱総研DCS株式会社・鹿島建設株式会社・昭和産業株式会社・神鋼商事株式会社・西日本旅客鉄道株式会社・鳥居薬品株式会社・東京急行電鉄株式会社・日本アジアグループ株式会社・日本テクノ株式会社・日本精工株式会社・日本中央競馬会・日本電信電話株式会社・富士化学工業株式会社・冨士ダイス株式会社・味の素株式会社・有限会社藍流経営研究所・有限責任監査法人トーマツ