RMリソース
リスクマネジメント Lesson
 9.緊急時対応
 
◆ 緊急事態発生時のマニュアル   ◆ エスカレーション・ルール
 
緊急事態発生時のマニュアル
-大地震発生、火災発生-

 多くの企業はこのような緊急事態発生時のマニュアルは既に作成しています。
 しかし、そのマニュアルをどれだけの社員が理解しているかは定かではありません。
 
 大地震発生時、まず何をしなければならないか?
 緊急時の対応は、発生する事象を対象とするのではなく、どのような状況になったらどうするか?をできるだけ簡単にまとめ、それを周知徹底することが重要です。
 多くの企業の緊急時マニュアルで、「震度6以上の場合」などの括りで対応内容を変えているケースをよく見ます。しかし、実際に地震が発生した場合、その震度が6以上なのか6未満なのかが判明するには10分程度必要であり、しかもテレビ、ラジオといった手段を使わなければ情報をとるのは困難です。
 
 日本企業のマニュアルは、ほとんどのケースで対応する職員が事務所にいることを想定しており、誰(どの部署)が何をするという細かい指示書になっています。しかし、往々にして緊急時は早朝や夜などスタッフが不足している時間帯に発生します。せっかく細かいマニュアルを作成していても、その作業を担当する人がいなければ何もなりません。
 
 ここで米国ホテルの緊急時対応を紹介します。
 ホテルは、ご存知の通り24時間営業です。常にお客様と接しており時間帯に関わらず、緊急時にはお客様への対応が求められます。米国のホテルでは、火災、地震に限らず非常ベルが鳴ると建物内にいるマネジャー職以上のスタッフが、集中管理室に駆け足で集合します。集中管理室にはプレートとヘルメット、トランシーバーの3点セットが1番から10番まで壁にかけてあり、早く到着した順に番号のプレートを取り、そこに書かれた内容、例えば「ロビーに出てお客様に事情を説明し、静かに待機していただくよう誘導する」を実行します。誰が、何をするという決まりではなく、早く来た人順に早く対応しなければならない事から始めます。このシステムの場合、マネジャー職以上は、プレートに書かれた行動10種類を研修や訓練にて理解していれば、全てを覚える必要はありません。また、夜中などスタッフの人数が極端に少ない時間帯においても基本的初期対応は実行されます。
 
 緊急時の行動として人が覚えられるのは、せいぜい3つ程度だと専門家はいいます。箇条書きにした緊急時行動マニュアルを社員に携帯させている企業も多くあります。全社員が必ず携帯していれば良いですが、なかなか難しいところです。女性はバッグに入れることが多く、バッグは「携帯」にはなりません。

 緊急時に人は冷静な判断はできない、ということを原点に、初期対応はできるだけ簡素化することが望ましいでしょう。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |