RMリソース
リスクマネジメント Lesson
 7.リスク・チェーン
 
 効率化したリスク管理を行う手法の一つに、Root Analysis(根源分析)があります。これは、実際に顕在化した事故や事件をリスク・チェーンという定義を基に分析し、対策を立案するという手法です。
 
リスク・チェーン
 
 リスク・チェーンとは図が示す通り、「事件や事故は、環境、環境要因、損失対象、損失発生機会、直接的結果、間接的結果という6つの条件を満たした場合大規模な損失へと発展する」という考えから、この条件の1つ以上に対策を講じることにより、つながり(チェーン)を切断し損失への発展を防止するという考え方です。
 
 例えば、ある営業マンが真冬に、路面が凍結しているなか車で山奥の企業に商品の説明に出かけた。営業へ向かう途中、車がスリップし廃車となるほどの大きな事故を起こし、本人も頭を強く打ち重傷を負った、という想定で分析をしてみましょう。
 
環境
 まず、環境としては営業マンが山奥の企業に営業に行く、ということがあたります。この営業マンが山奥へ行く必要が無ければ、この事故は発生しませんでした。
 
環境要因
 環境要因とは、損失が発生する確率を高める要因で、この場合路面の凍結などが考えられます。凍結路面に対する対策は、タイヤチェーンの使用や自動車以外の交通手段があげられます。
 
損失対象
 この事故の場合、会社の車と営業マン本人が企業の損失対象となります。自社の車を使用せず、レンタカーを利用していれば、自社の損失はありません。営業マンに関しても、代理店のスタッフが営業に向かっていれば、代理店の損失は発生しますが自社の損失は発生しません。
 
損失発生機会
 損失発生機会とは、車がガードレールに当たる瞬間、営業マンが頭をフロントガラスにぶつける瞬間であり、実際に「破損」や「怪我」といった損害が発生する瞬間を指します。ここでの対策は、車がガードレールに衝突し、ボディーが変形するために損失となると分析すると、ガードレールにあたっても変形しない強い車体を開発すれば、このリスクの対策となります。また、怪我を考えると、フロントガラスに頭が当たった瞬間怪我をすると分析し、フロントガラスに当たらないようにするにはどうするか?を考えます。この発想からシートベルトやエアバッグといった対策が開発されました。
 
直接的結果
 この事故における直接的結果は、車、営業マンの怪我が損失となります。
 
間接的結果
 この事故により山奥の企業での営業は中止となり、それにより販売機会が喪失したと分析できます。
 
 
 車と人の損失に対しては保険という対策があり、販売機会の喪失に対しては、事故後の迅速な対応が考えられます。逆に考えると、事故後の対応が迅速に行われない場合、将来的な販売機会を喪失する可能性があります。
 
 
次のページへ →
 
 
【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |