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リスクマネジメント Lesson
2.リスクマネジメントの必要性
 
 
-日本社会でなぜリスクマネジメントが必要になったのか?

 それは社会環境が急速に変化しているからです。企業・組織において効率的なリスクマネジメントを導入するには、経営者の全面的支援・リーダーシップが不可欠であり、経営者を含む全職員がその必要性を理解することが重要となります。
 
 10年前には着目されなかったリスクマネジメントが現在、企業・組織経営の必須といわれるようになった要因は数多く考えられますが、下記に示される8つのポイントをまずは理解する必要があるでしょう。
 
リスクマネジメントの必要性-8つのポイント ◆規制緩和

◆グローバル化

◆社会的責任の要請

◆情報技術の革新

◆メインバンク制度崩壊

◆雇用形態の変化

◆気象の変化

◆法的要請
 
メインバンク制度崩壊
 欧米でリスクマネジメントが発展し、日本では発展しなかった1つの要因として、日本社会におけるメインバンク制度が考えられます。欧米が財務的リスクを徹底して管理したのは、このメインバンク制度がなかったからといえるでしょう。
 企業が大きな損失を被った場合、欧米では倒産に直結します。そのため保険というツールを中心とした財務的補てんが必要でした。しかし、日本では戦後日本国全体の経済成長を目的に、国家戦略として企業財務は銀行を窓口とした国家にサポートされていました。そのため日本企業は欧米企業に比べ倒産リスクへの懸念は低く、その分業務に集中することができ、国の戦略通り大きな経済成長を遂げることができました。しかし、現代ではそのサポートが取り外され、銀行の貸し渋りを理由に次々と会社が倒産しています。これは、世界基準としては当然の現象です。
 
 雇用形態の変化もリスク管理の必要性を高めた要因です。近年、企業不祥事や事故が増加したと考えている人が多いでしょうが、実はそうではありません。
  高度経済成長期には終身雇用制度が日本社会での通例であり、会社は社員の将来を約束し、社員は会社のために家庭まで犠牲にして働くというバランスで発展していました。しかし、人件費削減という名目で企業が終身雇用制度を撤廃、それに伴いこのバランスが崩れたことによりそれまで露呈が食い止められていた不祥事や事故が外部に放出されただけということです。
 
 
 
「リスクがあること」は、企業・組織にとって恥ずべきことではありません。同様のリスクは、どの企業にも潜在しています。恥ずべきことは、そのリスクを認識・管理せず顕在化(損失へと発展すること)させてしまうことです。
 多くの経営者は、「リスクは企業にとってのマイナスイメージ」という先入観があるため、リスク管理に消極的です。しかし、これからの社会では、自社のリスクを十分に認識しそれをしっかり管理することが、企業・組織の信用を構築するのです。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |