RMリソース
リスクマネジメント Lesson
 12.リスクに強い組織体制
 
-リスクに強い組織とは?

 コンプライアンスを徹底している組織、内部統制がしっかりした組織、リスクマネジメント体制がしっかりした組織。

 リスクマネジメントのイメージは、まだまだ組織に対する負の要因をいかに管理するかに焦点が当てられています。しかし、今後企業が取り組むべきは、負の要因を管理することは最低限のレベルとし、さらなる利益を追求する組織運営手法としてのリスクマネジメントです。
 
 世界の市場がBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を中心に拡大し、日本企業も国内以上に世界市場を重視しなければ存続が危ぶまれる時代になりました。そのような環境下、リスクは市場の拡大と比例して増加します。
 企業のリスクは、1つの専門部署や数名の担当者だけで認識、管理できるものではありません。会計基準が世界基準に移行することによるリスクは経理、財務担当者が。労働者派遣法が改正されることによるリスクは人事、総務および運営現場が。消費者庁発足に伴うリスクは営業や企画、広報担当者がそれぞれの責任範囲および組織内他部署への影響まで、認識、報告する能力を持たなければなりません。
 
 リスクに強い組織とは、全社員が「リスク」と「顕在化した際の損失、影響」を一定レベル以上理解し、リスクに対し敏感に反応する組織文化を形成することです。そのためには、当然のことながら経営者の役割が大きくなります。経営者が、リスクに対する考え、保有、対応を判別するガイドラインを明確にする必要があります。全てのリスクを管理するなどという指示は、論外です。非英語圏の企業が社内公用語を英語とし、グローバル化を進めているように、リスクに対しても全社的に共通した理解と感性が必要です。会議やミーティングの場では常に議案に付随するリスクが検討され、リスク対応に関する責任の所在が明確にされなければなりません。
 
 全社員のリスク感性を向上するにはどうすればよいでしょうか?
 定期的な社員教育、研修はもちろん有効です。近年では技術の進歩に伴い、さまざまな研修に社内イントラネットを活用している企業も増えました。しかし、リスクマネジメント成功のカギとなる「コミュニケーション」の向上をも視野に入れると、日本の製造業界発展に大きな役割を担ったTQC(全社的品質管理)サークル活動の応用が最も効果的ではないかと考えます。現場社員を中心としたリスクの認識、対応の協議を全社大会で発表するような、リスクを共有する組織体制が必要です。

 日本企業が世界企業との商戦に勝ち、日本経済を発展させるには、日本式リスクマネジメント体制を構築することが必要なのです。
 
 
 
【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 |
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |