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リスクマネジメント Lesson
1.進化するリスクマネジメント
 
 
 日本社会においてリスクマネジメントは企業・組織運営の必須業務として位置づけられるようになりましたが、実際にリスクマネジメント体制を組織の一部として戦略的に取り組んでいる企業や組織は、残念ながらまだ一部しかありません。これは、リスクマネジメントをよく理解している経営者があまりいないからだと考えられます。【リスクマネジメント=危機管理】と言葉通り単純に受け取ると、「発生する確率が低い事件や事故に対し、コストを費やす必要はない」という考え、つまり「リスクマネジメントは費用対効果が見えない」という誤った判断になります。
 
リスクとは?
 リスクマネジメントにおいて最も重要なことは、いかに潜在するリスクを認識できるかということです。
 そのためには、まず「【リスク】とは何か?」を十分に理解する必要があります。世界のリスクマネジメントがここ10年間で大きく進化したのは、この「リスク」の捉え方の変化に伴います。50年以上の歴史を持つ欧米のリスクマネジメントは、1990年代までリスクを「企業の存続を脅かす大規模な財務的損失が発生する可能性があるもの」と捉え、基本的に保険購入が可能なもののみをリスクの対象としていました。
 
 リスクの捉え方に大きな変化が起きたのが、2001年に発生した9.11同時多発テロ事件とエンロン社、ワールドコム社の粉飾決算です。
 これらの事件により、企業経営者は企業を倒産に追い込むリスクは、大規模な財務的損失だけではなく、運営に関わる組織内部や信用、名声といった外部の評価も企業経営を左右するリスクであることに気付きました。
 
 そして現在、ERM(エンタープライズ・リスクマネジメント)という名の下、「リスク」の対象は「企業の目標達成を阻む要因」となり、欧米企業のリスクマネジメント室の多くは、コンプライアンス、内部監査との3本柱で形成されています。
 
   
 日本では、欧米とは異なり財務的リスク管理を中心としたリスクマネジメントのイメージは薄く、日本の社会文化である「信用」を守るためのコンプライアンスや緊急時対応などが先行しています。
 しかし、あらゆる面でグローバル化した現代社会では、リスクマネジメントは企業経営の柱であり、リスクに対応していない企業は、世界経済の潮流に乗り遅れることは間違いないでしょう。
 
 
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【リスクマネジメントレッスン‐目次‐】
| 1.進化するリスクマネジメント | 2.リスクマネジメントの必要性 | 3.リスクの認識 |
| 4.リスクマネジメント・プロセス | 5.リスクの評価・査定 | 6.リスクの管理・対策 |
| 7.リスク・チェーン | 8.BCP(事業継続計画) | 9.緊急時対応 | 
| 10.リスクファイナンス | 11.モニタリング | 12.リスクに強い組織体制 |